事業評価・見直し
変化の理論を見直す:前提の崩れと別の説明を検討する
想定した変化が起きないとき、活動を増やす前に確かめたいことがあります。活動は予定どおり届いたのか、変化につながる条件は残っているのか、結果には別の要因が働いていないかを分けて見直します。
この記事で作るもの
当初の想定、観察した事実、競合する説明、追加で確かめる証拠を並べた見直し表。完成した図を正当化するためではなく、どの仮定を更新するかを決めるために使います。
図を描く段階と、想定を見直す段階を分ける
変化の理論は、活動から望む変化に至る道筋と、その道筋が成立する条件を説明するものです。概念や最初の作成手順は、EvalCompassの変化の理論ガイドを参照できます。本稿では事業の途中で、新しい事実が出た後の見直しに絞ります。
英国財務省のMagenta Bookは、変化の理論に仮定、それを支える証拠の強さ、周辺の文脈を含め、理論に基づく評価では別の説明も検討する考え方を示しています。以下の表は、その確認を会議で進めるための本稿の提案です。
良い結果にも、別の説明を置く
次は、相談支援の利用につなぐ地域事業の説明用の架空例です。観察欄の出来事も仮に置いたもので、実績や効果の報告ではありません。
| 当初の想定 | 仮に観察したこと | 併せて検討する説明 | 次に確かめること |
|---|---|---|---|
| 案内が届けば相談先を知る | 案内配布後も窓口が知られていない | 案内が届いていない/届いたが意味が伝わらない | 届いた範囲と理解した内容を分けて確認する |
| 相談先を知れば利用できる | 窓口は知られているが利用されない | 受付時間が合わない/不安がある/利用する必要がない | 利用しなかった理由と受入条件を確認する |
| 利用後に困り事が軽くなる | 利用者の回答では改善が見られる | 他機関の支援/状況の自然な変化/回答者の偏り | 他の支援、変化の時期、未回答者の状況を可能な範囲で確認する |
活動不足、仮定の問題、確認不足を分ける
活動が予定どおり提供されていなければ、想定した道筋を十分に試せていない可能性があります。提供されていても条件が成立していなければ、受付方法や連携先などを変える必要があるかもしれません。一方で、記録が不足しているだけなら、何を変更すべきかはまだ分かりません。
順に「活動は届いたか」「途中の変化は確認できたか」「前提や外部環境は変わったか」「別の説明でも同じ結果になるか」を問います。数値と聞き取りが食い違ったら、都合のよい方を選ばず、対象、時点、定義の違いを確認します。証拠が足りない項目は未確認として残します。
次の確認を、変更する判断に結びつける
すべてを調べ直す必要はありません。誤っていると事業の進め方が変わる仮定から、既存記録で分かること、追加確認が必要なこと、現時点では確認できないことを分けます。確認の担当、期限、結果が出たら見直す活動も記入します。
- 対象者や提供条件が大きく変わった場合は、該当する道筋を再検討してから活動を広げる。
- 新しい証拠が当初の想定と合わない場合は、仮定か活動を改め、変更理由を残す。
- 重大な不利益の兆しがある場合は、追加実施を保留して対応を検討する。
- 根拠が足りない場合は、効果があったとも、なかったとも確定せず、判断を保留する。
更新履歴を残し、効果の断定と分ける
更新する図や文章には版の日付を付け、「どの事実から、どの仮定を、どう変えたか」を添えます。当初の版も残しておけば、後から結果に合う筋書きへ書き換えただけなのか、実施中に証拠に応じて判断したのかを確かめられます。
この見直し表を埋めただけでは、事業が変化を引き起こした証明にはなりません。効果や寄与を述べるには、問いに合う評価設計と複数の証拠の検討が必要です。活動と変化の関係を図の段階で点検したい場合は、ロジックモデルの矢印の確認票を先に使えます。
参照資料と確認範囲
以下の公開一次資料を2026年9月23日に確認しました。記入表と検討手順は、本稿で提案する整理方法です。
- HM Treasury: Magenta Book(2026年版HTML):2.2.1の仮定・証拠・文脈を含む変化の理論の説明と、理論に基づく評価における別の説明および複数の証拠の検討を参照。
見直し表と例は本稿で作成したもので、個別事業の効果を立証する評価手法一式ではありません。英国政府の評価指針を日本のすべての助成・委託事業の要件として適用していません。実案件の変化の理論や検証結果は掲載していません。
どの仮定を見直すかを整理する
既存の図や計画がある場合は、当初の想定と違ってきた事実、判断に迷っている活動を整理してお知らせください。
変化の理論の見直しを相談する