事業開発

新規事業の市場調査を絞る:最初の顧客と代替手段を確かめる

全国の市場が大きくても、自分たちが最初に提供できる地域・対象・条件とは一致しません。調査を始める前に、どこまで分かれば試行へ進むかを決めます。

この記事で作るもの

対象者、今の代替手段、選ぶ条件、情報の出所、未確認事項をまとめる初期調査票。

「誰に出会えるか」まで対象を狭める

対象を属性だけで置かず、「どの場面で困り、誰が選び、誰が費用を決めるか」を書きます。法人向けなら利用担当と購買決裁者を分けます。地域サービスなら移動できる範囲、利用できる時間、紹介を受ける経路も条件になります。

対象を狭めることは、その人たちに需要があると確定することではありません。まず調査する範囲を明示するためです。全国の統計をそのまま対象地域へ比例配分した値は推計であり、実際の問い合わせや購入数として扱いません。

競合商品がなくても、代わりの行動はある

「何もしない」「担当者が表計算で処理する」「知人に頼む」も、現状を続ける選択肢です。比較するのは機能数だけでなく、始める手間、費用、失敗したときの責任、やめやすさです。

イベント申込管理のサービスを考える説明用の架空例を置きます。下表は実際の顧客調査結果ではなく、聞き取りで埋める問いの例です。

代替手段を調べる票(説明用の架空例)
今の方法選ばれる理由の仮説切り替え時の負担直接確かめること
電話と紙の名簿参加者が使い慣れている連絡方法の周知どこで転記・聞き直しが起きるか
表計算とメール追加契約が要らない既存名簿の移行誰が更新し、何に時間を使うか
既存の予約サービス担当者が設定を知っている設定・権限の変更契約条件と現行業務の不一致は何か

資料から分かることと、相手に聞くことを分ける

公開情報を読んだら、資料名、公開日、調査対象、単位、分かったこと、分からないことを残します。たとえば「事業所数」は接点を持てる企業数や購入意思のある企業数と同じではありません。調査対象が異なる統計同士を、そのまま足したり割合にしたりしないようにします。

米国SBAの市場・競合調査ガイドは、既存資料を使う調査と顧客への直接調査を分け、間接的な競合も検討対象にしています。本稿では、公開情報で対象の輪郭を把握し、切り替え条件を聞き取りで確認する順番を提案します。

検索結果に現れる順番は、購入者が比較する順番の証拠にはしません。競合の料金表で分かるのは提示価格と条件であり、実際の成約価格や採算まで分かったことにはなりません。

調べ続けるか、試すかを決める

調査の終わりには「対象に会う経路があるか」「困る場面を具体に説明できるか」「現状から変える理由と障害が見えたか」を確認します。経路がなければ募集手段、場面が曖昧なら聞き取り、切り替えの手間が不明なら試作を次の作業にします。

好意的な情報だけで進めず、現状の方法で困っていない人や、導入を見送った理由も残します。調査票には進める案だけでなく、いったん見送る対象とその理由を書く欄を設けると、後の調査で同じ判断をやり直さずに済みます。

参照資料と確認範囲

以下の公開一次資料を2026年9月23日に確認しました。記入表と検討手順は、本稿で提案する整理方法です。

市場規模・競合の強さ・購入率を実測した記事ではありません。表の仮説を需要の証拠として使わず、対象に直接確認して更新してください。

中谷純

Written by

中谷 純 Jun Nakatani

企業・行政・NPOを横断し、新規事業の構想、合意形成、運営設計、評価・改善まで伴走する事業開発パートナーです。

  • 日本評価学会認定評価士
  • UmiNe合同会社 代表社員
  • 兵庫県宝塚市/全国オンライン
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調査資料は集まったが、次の一手を決められないとき

候補の対象者、いま使っている方法、まだ分からない条件を一枚にすると、追加調査と試行のどちらが必要か相談しやすくなります。

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