調査・評価
アンケートの質問を減らす:判断から逆算する設問設計表
聞きたいことを足し続けると、回答の負担が増え、集めた後で使えない設問も残ります。先に判断と対応を決め、必要な質問だけを残します。
この記事で作るもの
判断したいこと、質問、回答形式、集計方法、結果に応じた対応をつないだ設問設計表。配布前に、不要な設問や答えにくい表現を見つけるための道具です。
質問文より先に、誰の何を判断するかを書く
「満足度を知る」だけでは、結果をどう使うかが決まりません。たとえば「次回の開催時間を見直すか」「案内の分かりにくい箇所を直すか」のように、変えられる事柄と判断者を特定します。結果によって何も変えず、報告にも使わない質問は、入れる必要を考え直します。
調査対象も限定します。当日の参加者へ尋ねる調査で分かるのは、その回答者の経験や意見です。参加しなかった人の理由や地域全体の希望を、同じ結果から推定することはできません。
設問を、集計後の対応までつなげる
下表は説明会後のアンケートを設計する説明用の架空例です。回答結果や効果を示すものではありません。
| 判断 | 質問・回答形式の案 | 集計時に分けるもの | 結果に応じた対応 |
|---|---|---|---|
| 説明の順序を直すか | 今日の説明で分かりにくかった項目を選ぶ。複数選択可 | 分かりにくい項目なし/該当説明を聞いていない/未回答 | 該当する説明と資料を点検する |
| 時間帯を見直すか | 今回の開始時刻への参加のしやすさを段階で尋ねる | 回答段階別の人数、対象者数、回答者数 | 理由や参加できなかった人の情報を追加確認する |
| 案内の不足を補うか | 参加前に知りたかった情報を任意の自由記述で尋ねる | 内容別の記述、記述なし | 複数意見や重大な不足を確認し案内を修正する |
一つの設問に、一つの答えを求める
「内容と運営に満足しましたか」では、内容には満足していて運営には不満だった人が答えにくくなります。「説明内容は理解できましたか」と「会場内の案内は分かりましたか」のように、判断したい点を分けます。理解の自己申告を、実際に行動できた証拠として扱わないことも必要です。
「最近」「よく」「十分」といった言葉は、人によって対象が変わります。「今回の説明会」「過去1か月」など、調べたい期間や場面に合わせて明示します。選択肢は重複や漏れを点検し、単一選択か複数選択かを示します。該当しない回答、分からない回答、答えたくない回答を区別する必要も検討します。
Pew Research Centerの設問作成ガイドは、具体的な言葉、一度に一つの問い、選択肢の作り方や順序による影響を扱っています。上の日本語の例は、本稿で作成したものです。
配布前の試行で、意図どおり読めるか確かめる
対象に近い人に試しに答えてもらい、質問をどう理解したか、選びたい回答があったか、途中で迷った箇所を確認します。回答時間を測るだけで終わらず、設問と意図がずれていれば修正して再確認します。試行で使った回答は本調査に混ぜません。
収集の目的、任意であること、結果の用途、問い合わせ先などを説明し、必要のない個人情報は集めません。匿名と案内する場合には、氏名欄だけでなく、回答の組合せや配布・回収方法でも個人を特定し得るかを確認します。実際に匿名性を確保できない設計なら、説明と収集方法を見直します。
集計では、答えなかった人を消さない
対象者数、回答者数、設問ごとの有効回答数を区別して記載します。「該当なし」と未回答をまとめず、割合の分母を示します。任意回答の結果には回答者の偏りがあり得るため、回答者の傾向と対象全体の傾向を同一視しません。
割合の変化を比べる際は、対象者、設問、選択肢、回収方法が同じかを確認します。変えた場合は差を明示し、改善の効果と断定する前に別の説明も検討します。変化を追跡する設計については、アウトカム指標の追跡設計で扱います。
参照資料と確認範囲
以下の公開一次資料を2026年9月23日に確認しました。記入表と検討手順は、本稿で提案する整理方法です。
- Pew Research Center: Writing Survey Questions:単純で具体的な表現、一つずつの問い、選択肢の網羅性と重複、質問や選択肢の順序の影響に関する説明を参照。
記入表と日本語の設問例は本稿の提案です。特定の心理尺度として検証されたものではなく、無作為抽出や代表性のある調査を保証しません。個人情報の取扱いは調査主体と対象に応じて別途確認する必要があります。
配布前に、使う設問を絞り込む
調査票を作成中の場合は、結果で決めたいこと、対象者、回収方法を整理すると、設問の要否を検討しやすくなります。
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