合意形成・プロジェクト運営

ステークホルダー分析のやり方:関係者の影響・負担・確認事項を整理する

ステークホルダー分析では、「誰を説得するか」を決める前に、誰の生活や仕事がどう変わるかを調べます。関係者の一覧を、次に何を誰へ確かめるかが分かる確認表へ変える手順を解説します。

この記事で整理すること

  • 影響を与える人と、影響を受ける人を別々に探す
  • 本人の発言と分析者の推測を同じ欄に置かない
  • 関係者ごとに、説明・相談・判断の接点を決める

公開一次資料を参照した実務解説です。以下の記入表・手順はNobitokisuの編集案であり、特定案件の実施実績や成果を示すものではありません。

分析する「一つの変更」を決める

組織全体の関係者を一度に洗い出すと、名簿は長くても確認すべきことが見えにくくなります。まず「相談窓口の受付方法を変える」「地域事業を別の団体へ引き継ぐ」のように、分析の対象となる変更を一文にします。変更しない範囲と、判断する時期も書き添えます。

世界銀行の環境・社会基準ESS10(PDF、本文98〜99ページ)は、影響を受ける人と関心を持つ人を区別し、参加しにくい立場への配慮や関わり方を検討するよう求めています。これは世界銀行の対象事業に向けた基準であり、日本の地域事業すべてに直接適用される規則ではありません。本記事では、関係者への説明と対話を事業設計に含めるという考え方を参照します。

完成品は影響力マトリクス一枚でなくても構いません。小さな事業なら、「関係者/変わること/確認できたこと/未確認/次の接点」の一覧で始められます。

四つの方向から、名簿の外を探す

  1. 影響を受ける人:利用者だけでなく、利用できなくなる人、家族、近隣の人を挙げる。
  2. 実務を担う人:受付、連絡、記録、保守など、変更後に仕事が増える人を探す。
  3. 判断・資源を持つ人:予算、場所、契約、実施可否の判断者を、組織名から担当する役割まで分ける。
  4. 不足を確かめる人:現場の事情を知る人や専門家に、抜けている立場を尋ねる。

影響力が小さくても負担が大きい人は、優先して確認する対象になり得ます。影響力と関心の大小で整理する場合も、「不利益の大きさ」と「声を出しにくい条件」を別に残してください。影響力の小ささを、説明不要の根拠にしないためです。

期待・懸念・決められることを聞き分ける

最初から「賛成ですか」と聞くと、条件付きの意見が見えなくなります。次の問いを使い、回答はできる限り本人の言葉と、分析者の解釈に分けます。

  • 今はどの場面で困っていますか。最近の具体的な出来事はありますか。
  • この変更で、助かることと難しくなることは何ですか。
  • どの条件が揃えば協力できますか。引き受けられない仕事はありますか。
  • ご自身が決められることと、別の方の確認が必要なことは何ですか。
  • まだ話を聞けていない人は誰ですか。

「負担が増えそうだ」は反対の確定ではなく、確認する条件かもしれません。内容を要約した後は、発言者に「この理解で合っているか」を返します。聞けなかった項目を、好意的な回答で埋めないことが重要です。

未確認を残した分析表の記入例

説明用の架空例として、地域の相談窓口が予約方法を変更する場面を考えます。実在の案件や、変更の効果を報告するものではありません。

予約方法の変更を検討する関係者分析表
関係者確認できたこと未確認と次の接点
窓口の利用者現在は来場時に相談できるオンライン予約の利用可否を、利用者に個別確認
受付担当予約確認の担当は未定必要な作業を一緒に試し、担当範囲を相談
事業責任者実施可否を判断する役割判断に必要な費用・人員・利用者対応を確認
利用を諦めた人存在や事情をまだ把握していない過去の相談経路から、無理のない聞き取り方法を検討

「利用を諦めた人はオンラインが苦手」と結論づける材料は、この表にはありません。仮説は仮説のまま置き、確認できなければ判断の限界として残します。非公開の原票には情報源・確認日・更新担当を持たせ、共有版は必要な情報だけに絞ります。

全員を会議に呼ばず、関わる場面を決める

関係者ごとに「事前に伝える」「案を相談する」「判断を依頼する」「実務を一緒に試す」のどれが必要かを選びます。一人が複数の役割を持つ場合もあります。たとえば受付担当には実務試行、事業責任者には条件を整理した判断依頼が必要です。

誰かを代表者にしたときは、その人が話せる範囲を確かめます。利用者全体の代表権がない人へ、全利用者の了承を代わりに求めないでください。意見の相違は無理に平均化せず、条件の違いとして合意形成の論点整理へ渡します。

次の接点には、確認担当と期限を置きます。返答がない場合は同意と扱わず、別経路で確認する、対象を限定する、判断を保留する、のどれを取るか決めます。

更新するきっかけと、分析で分からないこと

対象者、実施場所、費用負担、担当者のいずれかが変わったときは一覧を見直します。新しい人が増えたかだけでなく、既存の関係者の負担や権限が変わっていないかも確認します。更新履歴は「変更点/根拠/次の確認」で残せば、判断を追えます。

関係者分析だけで、協力の約束や正式な合意が得られるわけではありません。また、本人が話さない理由を分析者が断定できるわけでもありません。個人の事情や対立を広い共有資料に書きすぎず、確認に必要な範囲で扱います。協働の責任と権限を具体的に決める段階は行政・企業・NPOの協働設計へ進みます。

一次資料の確認日:2026年9月23日。

中谷純

Written by

中谷 純 Jun Nakatani

企業・行政・NPOを横断し、新規事業の構想、合意形成、運営設計、評価・改善まで伴走する事業開発パートナーです。

  • 日本評価学会認定評価士
  • UmiNe合同会社 代表社員
  • 兵庫県宝塚市/全国オンライン
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関係者と確認事項を整理する

関係者が多く、誰に何を確認すればよいか整理できない場合は、事業案と現時点の関係者一覧をもとに相談できます。個人情報を除いた資料でも構いません。

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