事業開発

新規事業のKPI定義票:分母・期間・数え方を先に揃える

同じ「継続率」でも、利用者を数えるのか申込件数を数えるのかで値は変わります。目標を置く前に、誰をいつまで追い、何が起きたら一件と数えるのかを決めます。

この記事で作るもの

一つのKPIについて、目的・計算式・対象期間・除外条件・情報源・担当・次の行動を定める定義票。

まず一つの判断を選ぶ

「申込を増やす」と「初回利用後の離脱を減らす」では必要な指標が違います。今期の数字を全部ダッシュボードへ入れる前に、チームが変えられる判断を選びます。申込前の離脱なら案内や申込手順、初回利用後なら提供内容や次回案内を検討するための数字を置きます。

GOV.UKの指標設定ガイドは、サービスの目的、期待する便益、仮説から測るものを選び、利用者調査と合わせて改善する流れを示しています。指標名を借りるだけでなく、どの行動を変えるために使うかまで決めます。

「翌月継続」を、同じ人の観察にする

以下は定義を確かめるための説明用の架空例です。実サービスの実績や、良い継続率の基準ではありません。9月の初回利用者10人を、その翌月である10月末まで追い、再利用を確認できた4人を数える場合、翌月再利用率は4÷10=40%です。10月の新規利用者を分母へ加えると、別の集団の指標になります。

翌月再利用率の定義票(説明用の架空例)
記入欄定義する内容
判断初回利用後の案内を変更するか
分母9月中に初めて利用を完了した10人。申込のみは含めない
分子同じ10人のうち、10月中に再利用を完了した4人
集計時点10月が終わり、記録の確認が完了した後
重複・欠測同一人の複数回利用は一人。照合不能な記録は欠測として別記
情報源・担当利用記録と照合方法、集計担当、定義の版番号を記入

利用記録を照合できない人がいる場合、「再利用なし」と同じ扱いにしません。上の40%は10人全員を追えるという例の条件です。追跡期間が終わっていない集団も、完了した集団と同列に比較しないでください。

数字が悪いときの確認順を決めておく

  • 記録の欠落・二重計上・定義変更がないかを確認する。
  • 募集経路や対象者が変わっていないか、同じ条件の集団で比べる。
  • 実際に離れた場面を、問い合わせ・聞き取り・操作記録で確認する。
  • 変更する箇所を一つ決め、その後も同じ定義で観察する。

再利用が低い理由は不満とは限りません。一度で目的を達成するサービスなら、再利用を増やすこと自体が目標として不適切な場合があります。成果として何を望むのかへ戻って、指標を入れ替えます。

数値の改善と一緒に、しわ寄せを見る

完了率だけを上げようとすると、支援が必要な人を受付から外す誘因が生まれます。対象者の条件を変えていないか、スタッフの対応時間や未対応件数が増えていないかを合わせて確認します。

目標値を置くときは、過去の同条件の記録、試行結果、使える資源を根拠にします。根拠がまだなければ初回観察で基準となる状態を記録し、目標の確定を急ぎません。集計定義を変えた場合は変更日と理由を残し、旧定義の値へ説明なしに接続しないようにします。

参照資料と確認範囲

以下の公開一次資料を2026年9月23日に確認しました。記入表と検討手順は、本稿で提案する整理方法です。

40%は計算方法の架空例で、業界平均・目標水準・成功実績ではありません。KPIの変化だけから施策の因果効果は断定できません。

中谷純

Written by

中谷 純 Jun Nakatani

企業・行政・NPOを横断し、新規事業の構想、合意形成、運営設計、評価・改善まで伴走する事業開発パートナーです。

  • 日本評価学会認定評価士
  • UmiNe合同会社 代表社員
  • 兵庫県宝塚市/全国オンライン
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担当者によって集計結果が変わるとき

指標名、現在の計算式、どの場面で解釈が割れるかをお知らせください。匿名の定義票を使って、数え方と判断の関係を整理できます。

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